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相続税においての養子縁組のメリット・デメリット

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相続税は相続人の人数によって基礎控除額や税率が変化します。

少子化や高齢化が進む中で相続人となり得る人が少なく、同じ財産なのに他の家庭より多く相続税を支払うケースもあります。

その中の節税対策として『養子縁組』の効果について説明してきます。

※ 養子の制度には養子縁組と特別養子縁組があり、こちらでは一般的な養子縁組の説明をします。なお、特別養子縁組の場合には完全に実子と同じ扱いとなります。

 

 

養子縁組にはどんな効果があるのか

相続税においての養子縁組の効果は

【相続人の人数の増加】

この一点です。

相続税の基礎控除額の計算は

3,000万円+600万円×法定相続人の数=基礎控除額

であり、法定相続人の人数が増加すれば基礎控除額も増加します。

法定相続人の第一順位は『子』ですが、養子縁組をした養子は、実子とみなします(民法上)ので、『子』の人数に含まれます。

更に相続税の計算する過程の中で、法定相続分(民法上で相続することができる割合)を乗じるのですが、子の人数が増えれば子の1人あたりの相続割合も減りますので、税率が低くなります。

ケース1

相続人 子2人

子A 1/2

子B 1/2

 

ケース2

相続人3人

子A 1/3

子B 1/3

養子C 1/3

 

 

どのくらい相続税は変わるのか

養子が1人増えた場合の相続税額の比較をしてみます。

ケース1

相続人 妻、子A、B(2人)

相続財産  9,800万円

基礎控除額 4,800万円

 

9,800万円ー4,800万円=5,000万円(課税対象金額)

相続人(法定相続分)法定相続割合の金額税率計算相続税額
妻(1/2)5000万×1/2=2500万円2500万円×15%-50万円325万円
子A(1/4)5000万×1/4=1250万円1250万円×15%-50万円137.5万円
子B(1/4)5000」万×1/4=1250万円1250万円×15%-50万円137.5万円
合計650万円

 

※ 相続税の税率は累進課税といって対象の金額によって段階的に税率が上がっていきます。

現在の相続税では、

・1,000万円まで  ・・・  10%

・1,000万円を超えて

3,000万円まで  ・・・  15%

etc・・・

となっています。

3000万円だった場合、

1000万円までは税率10%なので

1000万円×10%=100万円

1000万円超から3000万円までは税率15%なので

2000万円×15%=300万円

となり、

100万円+300万円=400万円となりますが、幾一税率を当てはめるのは面倒です。

そこで速算表を用いて、

3000万円×15%-50万円=400万円となります。

 

ケース2

相続人 妻、子A、B、C(養子)

相続財産  9,800万円

基礎控除額 5,400万円

9,800万円ー5,400万円=4,400万円(課税対象金額)

相続人(法定相続分)法定相続割合の金額税率計算相続税額
妻(1/2)4400万×1/2=2200万円2200万円×15%-500千円280万円
子A(1/6)4400万円×1/6=733.3万733.3万円×10%73.33千円
子B(1/6)4400万円×1/6=733.3万733.3万円×10%73.33千円
養子C(1/6)4400万円×1/6=733.3万733.3万円×10%73.33千円
合計499.99万円

 

ケース1とケース2は相続人の人数が1人違うだけですが、

ケース1は650万円

ケース2は約500万円

と約150万円も納める相続税が変わってきます。

 

誰が養子になれるのか

養子縁組は民法で規定されており、法律上養親側と養子側にそれぞれ条件があります。

養親側

・ 成人に達していること

※ 現在は20歳ですが、民法改正により成人が18歳となった場合には18歳にかる可能性はあります。

養子側

・ 養親より年長(年上)ではないこと

・ 尊属(叔父、叔母等)ではないこと

 

これらの条件を満たせば基本的には養子縁組をすることがあります。

よくあるケースでは、

・ 孫を養子とする

・ 息子の妻を養子にする

・ 娘の夫を養子にする

・ 自分に子がいないのでお世話になった人を養子にする

などがあります。

 

相続税の申告にあたっての注意点

養子は基本的に実子扱いとなりますが、相続税の場合いくつか制限が設けられています。

・ 直系卑属(孫や曾孫)が養子になっている場合は相続税2割加算

・ 実子がいる場合は計算上養子は1人まで

・ 実子がいない場合は計算上養子は2人まで

直系卑属(孫や曾孫)が養子になっている場合は相続税2割加算

相続税には2割加算という制度があり、被相続人の一親等以外の人が相続した場合には本来の相続税に2割加算した相続税を納付するというものです。

(配偶者は加算対象外)

※ 一親等は両親や子であり、兄弟は二親等になるため加算税の対象となります。

養子は民法上実子扱いなので一親等になるのですが、養子が被相続人の直系卑属の場合には例外として2割加算の対象となります。

理由としては、本来父⇒子⇒孫と相続される場合には、父の時、子の時に相続税が発生します。しかし、父⇒孫と相続されると本来相続税の対象となる子⇒孫の時に相続税がかからなくなってしまうのでその対策として設立されました。

実子がいる場合は計算上養子は1人まで

以前は養子は何人いても実子と同じ扱いであったのですが、相続税の節税を重視するあまり、大量の養子縁組をした相続がありました。

本来養子縁組は、血縁関係のない人に円滑に財産を相続させるために作られた制度だったのでその趣旨とは異なるということで制限がかかりました。

実子がいない場合は計算上養子は2人まで

実子がいない夫婦の場合、養子の配偶者も養子にする場合がありますのでそれを考慮した形だと思われます。

最大のデメリット

相続税だけに焦点を当てますと養子縁組をして相続人の人数を増やすことに対してのデメリットはありません。

しかし、相続税はあくまでも相続に対しての税金です。

養子が一人増えれば相続財産を取得する権利を主張できる人数が増えることになります。

つまり、

【遺産分割で揉める可能性が増える】

これが唯一にして最大のデメリットです。

 

税務署の職員として数多くの相続税の申告書を見てきましたが、遺産分割に苦労している方がも多く見てきました。

本来の趣旨の下、養子縁組をするのであれば揉め事はないかもしれません。

しかし、相続税の税金を少なくするためだけに養子縁組をするとその人が権利を主張すれば財産を渡さなければいけません。

(基本的には法定相続分の半分は貰えます)

終わりに

簡単で確実に相続税を少なくすることができる『養子縁組』ですが、場合によっては節税した税金以上に揉め事にお金を使うことにもなります。

なので、本当に信頼できる(財産を引き継いでもらいたい)人を養子として迎えて相続税の手続きをしてもらえればと思います。

 

ABOUT ME
矢駒
元税務署職員 自身もファイナンシャルプランナーの試験勉強をしつつ、その勉強過程を公開します。